山内直人先生メモリアルセッションについて(ARNOVA,2024年11月20日~23日)
2024年11月20日~23日、米国ワシントンDCにて、国際学会ARNOVA(Association for Research on Nonprofit Organizations and Voluntary Action)の第53回年次大会が開催されました。その中で、6月に急逝された山内直人先生が企画・応募されていたパネルが「メモリアルセッション」として実施されました。
セッションは、ARNOVA新会長のChao Guo先生(University of Pennsylvania)の挨拶から始まりました。Guo先生がARNOVAで出会った初めてのアジア人であったこと、ARNOVAにいつも参加しており、学生の面倒をよく見ていた様子などが語られました。続いて、山内先生の教え子でもある柗永佳甫先生(大阪経済大学)より、若き時代からの思い出が写真と共に共有されました。
山内先生のお写真とともに
山内先生が今年のARNOVAで企画されていたのは、国際比較可能な市民社会のデータを考えるパネルです。こうした比較研究データの中でも最も影響のあるデータは、山内先生も日本代表として参画された The Johns Hopkins Comparative Non-profit Sector Project (CNP) であり、1990年代から2000年代を中心に進められました。しかしLester Salamonの死去により閉鎖されて以降、国境を横断して体系的に市民社会のデータを整える大きな動きは見られません。山内先生は、まさにこの点でイニシアティブを発揮しようと、市民社会国際比較研究データのアーカイブを目指し、今回のARNOVA大会のみならず、International Society for Third-Sector Research (ISTR) の大会に向けて、各国の研究者に声をかけていました。
今回のメモリアルパネルでは、まず小川顕正先生(新潟大学)から、山内先生との最後の共同研究となったV-Demデータと市民社会国際比較研究が紹介されました。続いて、同じく山内先生の共同研究者であったHelen Liu先生(国立台湾大学・ARNOVA理事)がモデレーターとなり、CNP研究の中核者でもあり市民社会比較研究の著名な研究者であるStefan Toepler先生(George Mason University)、Global Philanthropy Environment Indexで日本のデータを担当する吉岡貴之先生(岡山大学)から、様々なデータの存在やそれらの強み・弱みが紹介されました。その後は、国際比較可能なデータとどのように向き合っていけるのか、参加者とともに議論が行われました。
メモリアルセッションには、一時立ち見も出るなど、世界各国から多くの研究者が参加しました。山内先生の国際的なネットワークの広さと、その中で日本のプレゼンスを築かれてきたことを実感すると同時に、これを着実に引き継いでいくことの大切さを改めて認識する時間となりました。
大西 たまき(University of North Carolina Greensboro・ARNOVA理事)
岡田 彩(東北大学・ISTR理事)
夜には、大会近隣の日本食レストランでメモリアルディナーも開催されました